表面利回りだけで選ばない|築古戸建ての収支シミュレーション入門

物件情報に「利回り12%」と書かれていると、毎年12%の利益が残るように見える。しかし、一般に掲載される表面利回りは、空室、修繕、税金、保険、管理費、借入返済などを差し引く前の数字だ。

築古戸建ては購入価格が低く、表面利回りが高く見えやすい一方、購入直後の修繕や退去時の費用で手残りが大きく変わる。購入前に最低限作りたい収支表を、具体例と一緒に整理する。

表面利回りとは

年間の満室想定家賃 ÷ 物件価格 × 100

物件価格800万円、月額家賃8万円なら、年間家賃は96万円。表面利回りは96万円÷800万円×100=12%になる。

物件同士を大まかに比較するには便利だが、実際の利益を示す数字ではない。購入諸費用やリフォーム費用も分母に含まれていないことが多い。

実質利回りは経費を差し引いて考える

購入判断では、次のような考え方で実質的な収益性を見る。

(年間家賃収入 − 年間運営費)÷ 総投資額 × 100

総投資額には物件価格だけでなく、仲介手数料、登記費用、取得時の税金、融資費用、購入直後のリフォーム費用なども含める。

収支へ入れたい主な費用

  • 空室・家賃下落の見込み
  • 管理委託料、募集費用、広告料
  • 固定資産税・都市計画税
  • 火災保険・地震保険
  • 日常修繕と将来の大規模修繕
  • 清掃、庭木、除草、害虫対策
  • 町内会費など所有者が負担する費用
  • 借入金の元金返済と利息
  • 所得税・住民税など

税金は所有者の所得状況や経費、減価償却によって変わるため、まずは「税引前の手残り」を計算し、その後に税務上の利益を別に確認すると整理しやすい。

築古戸建ての収支シミュレーション例

購入時の条件

  • 物件価格:800万円
  • 購入諸費用:60万円
  • 購入直後の修繕:100万円
  • 総投資額:960万円
  • 想定家賃:月8万円(年96万円)

年間の運営費を見込む

  • 空室損:8万円(1か月分)
  • 管理・募集費の年平均:4万8,000円
  • 固定資産税等:8万円
  • 保険料:3万円
  • 修繕積立:12万円
  • その他:2万円

年間運営費は合計37万8,000円。税引前・返済前の収益は、96万円−37万8,000円=58万2,000円になる。

実質利回りは、58万2,000円÷960万円×100=約6.1%。表面利回り12%でも、実際の前提を入れると数字は大きく変わる。

融資を使う場合は「返済後の手残り」を見る

上の例で、年間返済額が42万円なら、税引前の手残りは58万2,000円−42万円=16万2,000円、月平均では約1万3,500円だ。

ここから想定外の修繕や税金の支払いが起きる。表面利回りが高くても、返済後の余裕が小さければ、給湯器や屋根の故障で簡単に赤字になる。

なお、借入返済額のうち元金部分は必要経費ではない。支出はしていても税務上の利益から差し引けないため、帳簿上の利益と現金の手残りは一致しない。

3つの条件でストレスをかける

金融庁も、賃料下落や空室増加などを考慮した長期の収支シミュレーションの重要性を示している。購入前には、少なくとも次の3パターンを作ろう。

通常ケース

現在の相場家賃、地域の標準的な空室期間、平年の修繕費で計算する。

慎重ケース

家賃を5~10%下げ、空室を2~3か月に増やし、修繕費も多めに置く。

大きな修繕が重なるケース

給湯器、エアコン、外壁、屋根、水回りなどの交換時期を確認し、数十万円単位の支出が発生しても返済を続けられるかを見る。

家賃は募集価格ではなく成約相場で考える

売主や販売会社の想定家賃をそのまま使わず、近隣の競合物件を調べる。間取り、築年数、駐車場、ペット可、駅や学校までの距離など条件をそろえて比較する。

可能なら地元の複数の管理会社へ、現実的な成約家賃と募集期間を聞く。「いくらで募集できるか」だけでなく、「いくらなら何か月程度で決まりそうか」を確認しよう。

修繕費は年平均と突発費を分ける

毎年一定額が出るわけではないため、修繕費ゼロの年だけを基準にすると危険だ。年間の修繕積立を収支へ入れたうえで、別に大規模修繕の予定表を作る。

  • 給湯器、エアコン、換気扇
  • 水栓、トイレ、排水設備
  • 外壁、屋根、防水
  • 床、壁紙、建具
  • シロアリ、防蟻処理
  • 庭、塀、擁壁、雨どい

築古戸建てでは、建物だけでなく敷地内の設備や外構も費用の発生源になる。

購入前に確認したい数字

  • 物件価格と総投資額
  • 満室想定家賃と現実的な成約家賃
  • 想定空室月数
  • 年間運営費
  • 返済前の収益
  • 年間返済額と返済後の手残り
  • 大規模修繕後も残せる現金
  • 家賃下落・金利上昇時の収支

まとめ

表面利回りは入口の比較には使えるが、それだけで物件を選ぶと、購入後の手残りを見誤る。総投資額、空室、運営費、修繕、借入返済を入れ、通常・慎重・大規模修繕の3ケースで確認しよう。

金融庁が示すように、不動産投資は長期の賃貸事業だ。給与で赤字を埋め続ける前提ではなく、物件自身のキャッシュフローで無理なく運営できるかを基準にしたい。

参考

※この記事は一般的な計算例であり、特定の物件の収益や投資成果を保証するものではない。実際の購入判断は、物件調査、金融機関、税理士などの専門家への確認も踏まえて行ってほしい。

購入後に家賃・空室・退去率を改善する具体策は、入居しやすい築古戸建てへのバリューアップで優先順位を整理している。

利回りと手残りを詳しく確認

表面利回りだけでは、空室・修繕・取得費・返済後の現金は分からない。不動産投資の利回り|表面・実質・手残りの見方で数字を入れて確認しよう。

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