築古戸建てを内見すると、登記事項証明書の床面積より建物が広く見えることがあります。よくあるのが、ベランダや物干し場を部屋にした、1階に台所や浴室を増やした、車庫や物置を後から造ったといったケースです。
このとき注意したいのが「未登記増築」「違反建築」「既存不適格」の違いです。似た言葉ですが、同じ意味ではありません。
未登記だから直ちに違反建築とは限らず、登記を合わせれば終わるケースもあります。一方、登記を直しても、建ぺい率や容積率、接道、防火などの法令違反が解消されるわけではありません。
この記事では、築古戸建てを購入する大家の立場から、未登記増築の見つけ方、確認する資料、融資や売却への影響、契約前の対応を整理します。
※本記事は一般的な情報です。物件ごとの適法性や是正方法は、特定行政庁、建築士、土地家屋調査士、司法書士などへ確認してください。

未登記増築・違反建築・既存不適格の違い
最初に、3つを分けて考えます。
未登記増築
増築によって建物の床面積や構造などが変わったのに、登記の表題部が現況に合わせて変更されていない状態です。
不動産登記法では、建物の種類・構造・床面積などに変更があった場合、原則として変更の日から1か月以内に表題部の変更登記を申請することとされています。
未登記は登記手続きの問題ですが、増築部分が建築基準法などに適合しているかは別途確認が必要です。
違反建築
建築時または増改築後の状態が、建築基準法や関係法令に適合していない建物です。
たとえば、増築により建ぺい率・容積率を超えた、必要な確認申請を行っていない、防火上必要な仕様を満たしていない、といった可能性があります。
確認申請が必要かどうかは、地域、建物の規模・構造、工事内容、増築面積などによって異なります。「小さな増築だから申請不要」と自己判断しないことが大切です。
既存不適格
建築した当時は法令に適合していたものの、その後の法改正や都市計画の変更などにより、現在の基準には合わなくなった建物です。
当初から違反していた建物や、後から無許可の増築などで違反状態になった建物とは区別します。どの時点の法令が適用されるか、当時の確認済証や図面が残っているかが判断材料になります。
未登記増築が疑われるサイン
次のような場合は、登記と現況の不一致を疑います。
- 登記事項証明書と販売図面で床面積が違う
- 固定資産税の課税床面積だけが大きい
- 建物の外壁や屋根の一部だけ材質・形が違う
- 1階の台所、浴室、洋室などが不自然に張り出している
- ベランダや縁側が壁で囲われ、室内として使われている
- 車庫、倉庫、離れがあるのに登記に記載がない
- 間取り図と現地の部屋数・配置が合わない
- 建築確認図面と現況が違う
見た目だけでは、増築時期や適法性までは判断できません。違和感を見つけたら、資料を集めて照合します。

購入前に照合したい資料
1.登記事項証明書
建物の種類、構造、各階の床面積、附属建物を確認します。
登記面積は壁の中心線などを基準に算定するため、広告上の面積や実測値と単純には一致しない場合があります。ただし、差が大きいときは理由を確認しましょう。
2.固定資産税の課税資料
固定資産税・都市計画税の課税明細や評価証明書に記載された床面積を確認します。
課税されているから登記済み、または適法という意味ではありません。登記面積、課税面積、現況面積の3つを比べる材料として使います。
3.確認済証・検査済証・建築計画概要書
新築時や増築時の確認済証、検査済証、図面を確認します。売主が保管していない場合でも、自治体で建築計画概要書や台帳記載事項証明などを取得できることがあります。
当初の計画と現況を比べると、後から増やされた部分や用途変更が分かりやすくなります。
4.販売図面・間取り図・現地
販売図面の面積や間取りを、そのまま正しいと考えず、登記や現地と照合します。
外周を確認し、屋根・外壁・基礎の継ぎ目、不自然な開口部、後付けの配管などを見ます。床下や天井裏を確認できる場合は、構造のつながりも判断材料になります。
未登記増築が購入に与える影響
融資が難しくなる可能性
金融機関は、担保となる建物の登記と現況が一致しているかを確認します。
未登記部分や違反の疑いがあると、融資対象外、融資額の減額、変更登記や是正を融資条件にされる場合があります。金融機関ごとに扱いが異なるため、買付前または融資相談の早い段階で資料を提示しましょう。
将来の売却で同じ問題が起きる
現金で購入できても、将来の買主が融資を利用できなければ売却先が狭くなります。
購入時に解決しなかった不一致は、売却時にも説明と対応が必要です。「安く買えた」だけで判断せず、出口で誰が買える物件かを考えます。
登記・調査・是正費用がかかる
変更登記には、現地調査、測量、図面作成、必要書類の収集などが必要です。一般に土地家屋調査士へ相談します。
法令違反がある場合は、登記だけでは解決しません。増築部分の撤去、改修、用途変更などが必要になる可能性があります。是正できるかどうかも含め、建築士や自治体へ確認します。
保険・修繕・賃貸運営への影響
保険の対象面積や建物評価、事故時の説明に影響する場合があります。また、増築部分の基礎、構造、防水、断熱、配線、配管が適切でないと、雨漏りや漏電などの修繕リスクも高まります。
入居者が使う部分であれば、安全性を現地で確認し、必要な修繕費を見込みます。

登記をすれば適法になるわけではない
特に誤解しやすいのが、「未登記部分を登記すれば問題が解決する」という考え方です。
登記は建物の物理的な現況を公示する制度であり、建築基準法上の適法性を保証するものではありません。逆に、固定資産税が課税されていても適法性が確認されたとは限りません。
次の3点を別々に確認します。
- 登記と現況が一致しているか
- 建築時・増築時の手続きが適切だったか
- 現在の建物が法令上どのような扱いか
買主側で登記する前に所有関係を確認する
増築部分の工事を誰が行い、費用を負担したかによっては、所有関係の資料が必要になります。
売主が増築したのか、前所有者が増築したのか、工事請負契約書や領収書が残っているかを確認します。資料が少ない築古戸建てでは、変更登記に必要な証明方法を土地家屋調査士へ事前に相談しておくと安全です。
契約前に決めたい対応方法
未登記増築が見つかったら、少なくとも次のどれで対応するかを契約前に決めます。
- 売主の責任と費用で調査・変更登記を完了してから引き渡す
- 売主が建築士や自治体へ確認し、結果を書面で提示する
- 是正や撤去を売主側で行う
- 買主が引き継ぐ範囲、費用、リスクを価格へ反映する
- 調査結果を融資承認や契約の停止条件にする
- 解決が難しい場合は購入を見送る
「現況有姿」「契約不適合責任免責」という言葉だけで処理せず、未登記部分の場所・面積・経緯と、買主が負担する内容を契約書へ具体的に記載します。
現況有姿と免責の違いは、築古戸建ての現況有姿・契約不適合責任で詳しく解説しています。
仲介会社・売主へ確認したい質問
- 登記面積と現況面積が違う理由は何か
- 増築した場所、時期、工事業者は分かるか
- 確認済証、検査済証、増築図面はあるか
- 建築確認や完了検査が必要な工事だったか
- 固定資産税は増築部分を含めて課税されているか
- 変更登記に必要な所有権資料はそろっているか
- 金融機関へ事前に説明しているか
- 売主側で調査、登記、是正を行えるか
- 引渡し後に問題が判明した場合、誰が費用を負担するか
回答は可能な限り書面で受け取り、重要事項説明書と売買契約書の特約へ反映します。
重要事項説明書全体の確認方法は、築古戸建ての重要事項説明書チェックポイントも参考にしてください。
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まとめ
築古戸建てで登記と現況が違うときは、未登記増築、違反建築、既存不適格を混同せずに確認する必要があります。
登記を合わせるだけで終わるのか、建築上の調査や是正が必要なのかによって、費用と出口は大きく変わります。
購入前に登記、課税資料、確認済証・検査済証、現地を照合し、金融機関、建築士、土地家屋調査士へ早めに相談しましょう。解決方法と費用負担が明確にならない場合は、価格へ反映するだけでなく、購入を見送る判断も必要です。

