戸建て賃貸が空室になると、室内の水道を使う機会がなくなります。
そのまま長期間放置すると、排水口から下水のようなにおいが上がったり、蛇口を開けたときに水の色やにおいが気になったりすることがあります。見えない場所で漏水や排水不良が起きていても、入居者がいないため発見が遅れやすい点にも注意が必要です。
この記事では、空室中の戸建て賃貸で通水を行う目的、頻度の考え方、確認する場所と安全な手順を大家目線で解説します。
空室中に通水する3つの目的
1.排水トラップの封水を保つ
キッチン、洗面、浴室、トイレなどの排水設備には、配管の途中に水をためて下水管からの臭気や害虫の侵入を抑える「排水トラップ」があります。ここにたまった水は封水と呼ばれます。排水口以外も含めた侵入口と痕跡の点検は、空室中の害虫・害獣対策で確認できます。
水回りを長期間使わないと、封水が蒸発して排水口からにおいが上がる場合があります。水を流したり、排水口へ適量の水を注いだりして、封水切れを防ぐことが通水の大きな目的です。
2.水漏れや排水の異常を早めに見つける
蛇口を開けると、給水管や接続部から水が漏れていないか、排水がスムーズに流れるかを確認できます。
シンク下や洗面台下の収納、トイレの床、給湯器まわりまで見て、水滴、湿り、カビ、異音がないか確認しましょう。水を止めたあとも漏れていないかを見ることが大切です。
3.長期間たまった水を入れ替える
給水管の中で水が長く滞留すると、水質が変化する場合があります。東京都水道局も、長い間水道を使用しなかった場合は、使用前に少しの間流すよう案内しています。
久しぶりに水道を使うときは、いきなり飲用せず、まず水を流して色、におい、濁りを確認してください。詳しくは東京都水道局の「給水管について」を確認できます。
空室中の通水頻度はどのくらい?
通水頻度に、すべての物件へ当てはまる一律の正解はありません。建物の状態、季節、水道契約、地域の気候、管理会社との契約内容に合わせて決めます。
国土交通省の調査資料に掲載された空き家維持保全サービスの一例では、月1回程度の巡回時に、各蛇口を3分程度通水し、排水トラップへの注水や水漏れ確認を行う内容が示されています。ただし、これは管理メニューの事例であり、全国一律の義務や基準ではありません。
まずは定期巡回の予定に通水を組み込み、夏の高温時、長期間訪問できなかったあと、内見や工事の前後など、物件の状況に応じて確認しましょう。
通水と一緒に室内の空気を入れ替える場合は「空室中の換気は必要?戸建て大家が知りたい頻度・方法とカビ対策」も参考にしてください。
ポスト、庭、外壁、防犯設備なども一緒に確認する場合は「空室中の戸建て賃貸の巡回チェックリスト15項目」を利用すると、点検漏れを減らせます。
通水前に確認したい4つのこと
1.水道契約と元栓の管理方針
最初に、水道が使用できる契約状態か、元栓を開けて管理しているかを確認します。使用中止の手続きをしている物件で、無断で開栓したり水を使用したりしてはいけません。
管理会社へ巡回を依頼している場合は、元栓の開閉を誰が行うのか、通水後に閉めるのか、料金を誰が負担するのかも決めておきます。
2.蛇口がすべて閉まっているか
元栓を開ける前に、キッチン、洗面、浴室、屋外水栓などが閉まっていることを確認します。ホースが外れている洗濯機用水栓や、凍結で傷んだ配管にも注意してください。
3.配管や床に異常がないか
シンク下、洗面台下、トイレの床、給湯器や露出配管に、水滴、腐食、ひび、濡れた跡がないか目視します。異常がある場合は通水せず、管理会社や指定給水装置工事事業者へ相談します。
4.水道メーターの位置
水を使っていない状態で水道メーターのパイロットが動いている場合は、漏水の疑いがあります。通水前後に確認できるよう、メーターボックスの位置と止水栓の閉め方を把握しておきましょう。
漏水チェックの方法は、東京都水道局の「漏水は早期発見・早期修繕を」も参考になります。
通水する場所と確認ポイント
キッチン
少量から水を出し、濁りや異臭がないか、排水が流れるかを確認します。シンク下の給水・排水接続部を見て、水滴や湿りがないかも確認してください。
洗面台
蛇口の根元、収納内の配管、排水口を確認します。洗面ボウルに水がたまる場合は、ゴミ受けや排水口の詰まりも見ておきましょう。
浴室とシャワー
浴槽と洗い場の排水口へ水を流します。シャワーホースや水栓の接続部から漏れていないか、排水に時間がかかりすぎないかを確認します。作業後は浴室内の水分を残しすぎないよう換気します。
トイレ
便器内の水位が極端に下がっていないか、床や給水管が濡れていないかを確認します。水道を使用できる状態なら、異物がないことを確認してから流し、給水と排水の動作を見ます。
洗濯機置き場
洗濯機が撤去されている場合は、給水栓が閉まっているか、排水口からにおいが上がっていないかを確認します。排水トラップがある場合は、その構造と管理方針に合った方法で封水を補います。
屋外水栓・給湯器まわり
屋外水栓、散水栓、給湯器の配管は、漏水や凍結被害を見逃しやすい場所です。給湯器は、ガス・電気・水道の契約や取扱説明書を確認せずに無理に運転しないでください。
空室巡回での通水手順
- 水道契約と元栓の状態を確認する
- 蛇口、配管、床を目視し、水を使っていない状態でメーターを見る
- 問題がなければ、蛇口を一か所ずつ少量から開ける
- 水の色、におい、流れ方を確認する
- 排水の速さ、異音、逆流がないかを見る
- 蛇口を閉め、接続部と床に漏れがないか再確認する
- 最後にメーターと元栓を確認し、写真と記録を残す
一度に複数の蛇口を開けると、異常が起きた場所を判断しにくくなります。水回りごとに確認し、異常があればすぐ止められるように作業しましょう。
水道を止めて管理する場合
空室期間が長い場合、水道を契約したままにするか、使用中止にするかは物件ごとに判断します。
- 契約を維持すると、巡回時に通水や清掃をしやすい
- 一方で、基本料金がかかり、漏水が起きた場合のリスクがある
- 使用中止にすると、現地で水道を使った通水はできない
国土交通省の「不動産業者による空き家管理受託のガイドライン」では、必要な水量が排水トラップの封水程度なら、水道を止めたうえで巡回時に水を持参する方法も示されています。
ただし、便器や排水設備の構造によって必要な管理は異なります。閉栓中の物件では無理に元栓を操作せず、持参した水を使う場所や量を管理会社・設備業者と決めておきましょう。
冬は凍結と水抜きに注意する
寒冷地や冷え込みの強い地域では、通水よりも凍結防止の水抜きを優先する場合があります。水が配管内に残ったまま凍ると、配管や水栓、給湯器が破損するおそれがあります。
東京都水道局も、凍結が考えられる時期に数日間家を空ける場合は、メーターボックス内のバルブを閉めるよう案内しています。地域や設備によって手順が異なるため、現地の水道事業者や給湯器メーカーの案内を確認してください。
詳しくは「水道管の凍結について」を参考にしてください。
こんな異常は専門業者へ相談する
- すべての蛇口を閉めても水道メーターが動いている
- 濁りや異臭が、水を流しても改善しない
- 排水が極端に遅い、逆流する、ゴボゴボ音が続く
- シンク下、洗面台下、床や壁が濡れている
- 配管や水栓にひび、腐食、凍結による破損がある
- 下水臭が封水を補っても解消しない
水漏れや配管の異常は、自己判断で分解すると被害が広がる場合があります。水道事業者が案内する指定給水装置工事事業者、排水設備業者、管理会社へ相談してください。
大家自身で対応しやすい軽微な補修と、業者へ依頼したい修繕の考え方は「築古戸建てのDIY・修繕10選」でも紹介しています。
まとめ
空室中の通水は、排水トラップの封水を保ち、においや害虫を防ぐだけでなく、水漏れ、排水不良、水の濁りなどを早めに見つけるためにも役立ちます。
通水前に水道契約、元栓、蛇口、配管、水道メーターを確認し、問題がなければ水回りを一か所ずつ点検します。作業後は漏れがないかを再確認し、写真と記録を残しましょう。
水道を止めている物件や凍結のおそれがある地域では、無理に通水せず、物件の管理方針と地域の案内に合わせることが大切です。判断に迷う異常は、早めに専門業者へ相談してください。

