中古戸建ての減価償却は、耐用年数が分かっても「今年はいくら経費になるのか」「翌年はどの残高から計算するのか」で迷いやすいところです。
この記事では、建物の取得価額240万円・耐用年数4年・7月から賃貸に使用する架空例を使い、初年度30万円、翌年60万円になる計算と記録の残し方を確認します。実在物件の実績や節税効果を示すものではありません。
対象は個人大家が通常の売買で取得した国内の賃貸用建物です。相続・贈与、自宅から賃貸への転用、法人の処理は別途確認してください。資料確認日:2026年10月20日。
計算前にそろえる4つの情報
まず、次の情報を自分の物件の資料から拾います。分からない数字は仮の値で申告せず、未確認欄に残して税務署や税理士へ確認しましょう。
| 入力項目 | 確認する資料 | 整理すること |
|---|---|---|
| 建物の取得価額 | 売買契約書・精算書・費用明細 | 土地代を除き、建物価格と取得に伴う費用の扱いを確認 |
| 構造・取得時の経過年数 | 登記事項証明書・建築関係資料 | 木造、木骨モルタル造などの区分と建築年月 |
| 償却方法・耐用年数・率 | 取得日・耐用年数の計算メモ・国税庁の表 | 適用条件を確認してから、対応する償却率を選ぶ |
| 業務使用開始日・使用割合 | 契約・募集・工事完了などの記録 | いつ賃貸の用に供したか、自宅部分がないか |
取得価額は、単純に物件の販売価格を入力する欄ではありません。土地との配分、取得費用、別に計上する設備などを整理した金額です。基本的な考え方は大家の減価償却入門を参照してください。
今回の計算例の前提
説明用に条件を次のように固定します。この240万円や4年を、条件の異なる実物件にそのまま当てはめないでください。
| 項目 | 架空例の条件 |
|---|---|
| 取得・用途 | 2026年7月15日に通常の売買で取得し、同日から賃貸の用に供した国内の住宅用建物 |
| 構造・築年数 | 木造住宅(木骨モルタル造ではない)、取得時に築25年 |
| 建物の取得価額 | 2,400,000円。土地代を除き、取得費用の扱いも整理済みの金額とする |
| 使用割合 | 賃貸用100%。自己使用部分なし |
| 中古資産の耐用年数 | 使用可能期間を合理的に見積もることが困難で、簡便法を適用できる条件を満たすものとする |
| 工事・設備 | 計算対象は建物本体のみ。使用開始に当たって資本的支出はなく、別計上の設備・追加工事はこの例に含めない |
| 使用継続 | 初年度は12月末まで、翌年は1月から12月まで継続使用。売却・取壊し・用途変更なし |
業務使用開始日は「購入日なら自動的に決まる」という意味ではありません。この例では、7月15日に賃貸の用に供した事実を確認できていると仮定しています。工事中・募集準備中など判断が必要な場合は、日付の根拠から先に整理します。
初年度の減価償却費を順番に計算する
1.耐用年数と償却率を確認する
木造住宅の法定耐用年数は22年です。築25年はその全部を経過しているため、この例で簡便法を使うと、22年×20%=4.4年。1年未満を切り捨てて4年になります。
2026年に通常購入した建物は定額法で計算します。国税庁の償却率等表で「定額法・耐用年数4年」を見ると、率は0.250です。旧定額法や定率法の列を取り違えないようにします。
2.年間額を出し、初年度の月数を掛ける
表が画面に収まらない場合は、横にスクロールして確認できます。
| 手順 | 計算式 | 結果 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 耐用年数 | 22年×20%=4.4年 → 端数切捨て | 4年 | 中古資産の簡便法(上記条件) |
| 定額法の率 | 耐用年数4年に対応する率 | 0.250 | 国税庁の償却率等表 |
| 12か月分の額 | 2,400,000円×0.250 | 600,000円 | 取得価額×定額法の率 |
| 初年度の使用月数 | 7月から12月 | 6か月 | 月の途中の開始月も1か月に数える |
| 初年度の償却費 | 600,000円×6÷12×100% | 300,000円 | 年間額を業務使用月数で月割り |
この例では、7月15日からの日数で日割りせず、7月を含む6か月で計算します。購入代金240万円の全額や、12か月分の60万円を初年度の経費にしない点がポイントです。
ここで使った金額では円未満の端数は生じません。別の金額で計算するときは申告書作成コーナー等の端数処理も確認してください。
翌年の金額と年末残高を確認する
翌年も条件が変わらず12か月使用するなら、2,400,000円×0.250×12÷12=600,000円です。定額法なので、前年末残高210万円に0.250を掛け直す計算ではありません。
表が画面に収まらない場合は、横にスクロールして確認できます。
| 年 | 取得価額 | 前年までの償却累計 | 当年償却費 | 年末の未償却残高 |
|---|---|---|---|---|
| 2026年・初年度 | 2,400,000円 | 0円 | 300,000円 | 2,100,000円 |
| 2027年・翌年 | 2,400,000円 | 300,000円 | 600,000円 | 1,500,000円 |
翌年末の残高は「取得価額240万円−前年まで30万円−当年60万円=150万円」と照合できます。初年度の年初にはまだ取得していないので、台帳上は取得時の増加240万円を記録することも忘れないでください。
なお、60万円を無制限に毎年計上できるわけではありません。償却が進んだ最後の年は、建物の残高1円を残すための調整が必要です。この表は初年度・翌年の比較用であり、償却終了までの表ではありません。
工事や設備がある場合は、建物本体と分けて整理する
購入後のリフォームや設備交換がある物件では、上の例だけで申告額は決まりません。請求書を工事・設備ごとの明細に分け、修繕費に当たるか、資本的支出として扱うか、別の資産として計上するかを確認します。
工事名が「修繕」だから全額経費、築古だから追加工事も全部4年、という判断は避けましょう。使用開始のための大きな資本的支出は、中古資産の簡便法を使えるかにも関係します。詳しくは修繕費と資本的支出の違いへ。
相談するときは、「建物の購入代金」「土地代」「取得に伴う費用」「工事の内容と金額」「別に購入した設備」を分けて見せると、何を確認する必要があるか整理しやすくなります。
計算結果と根拠を台帳に残す
計算メモは、毎年の金額だけでなく、翌年に同じ条件を再現できる形にします。今回の例なら、次の記録を一緒に残します。
- 物件・資産名:物件A/住宅用建物本体
- 取得日・業務使用開始日:いずれも2026年7月15日(架空の設定)
- 取得価額:2,400,000円。土地との区分や取得費用の整理メモを添付
- 構造・経過年数・適用根拠:木造住宅、築25年、簡便法の適用条件と4年の計算メモ
- 方法・率:定額法、0.250。参照した償却率表を記録
- 初年度:6か月、賃貸用100%、償却費300,000円、年末残高2,100,000円
- 翌年:12か月、賃貸用100%、償却費600,000円、年末残高1,500,000円
- 根拠資料:契約書、精算書、登記事項証明書、使用開始を確認できる記録などの保存先
資料の保管は大家の帳簿・領収書の整理も参考にしてください。未確認事項は「建物価格の配分根拠が未確認」など具体的に書き、確定した値と区別しておきます。
減価償却費30万円は、30万円の現金が今年戻るという意味ではありません。税額への影響は所得や他の条件で変わります。家賃収入、借入返済、修繕支出などの現金収支と、税務上の費用配分を分けて管理しましょう。
計算を確定する前のチェック
- 建物の取得価額に土地代が混ざっていないか
- 中古資産の簡便法を使える条件を確認したか
- 取得時期に合った方法・償却率の列を選んだか
- 業務使用開始日の根拠があり、初年度の月割りを反映したか
- 自己使用部分、設備、工事を同じ計算に混ぜていないか
- 取得価額に含めた金額を修繕費などで二重に計上していないか
- 前年の申告資料と台帳の残高がつながっているか
計算式に入れる前の金額・条件を整えることが、申告時の手戻りを減らします。判断がつかない項目は資料と質問をまとめ、税務署や税理士へ確認してください。
参考資料
- 国税庁:減価償却のあらまし(所得税)
- 国税庁:定額法と定率法による減価償却
- 国税庁:中古建物の計算事例(所得税。耐用年数の見積り・簡便法の説明を参照)。自宅転用の事例なので、その未償却残高の計算は本記事の通常購入例には使用していません。
- 国税庁:中古資産の耐用年数(法人税の案内。簡便法の計算と制限の補足資料)
- 国税庁:減価償却資産の償却率等表(PDF)
- 国税庁:本年中の償却期間とは(令和7年分)
本記事は一般的な計算例です。実際の取得価額、使用開始日、資本的支出の区分などは個別の事実によって変わります。申告時には対象年分の最新の案内も確認してください。
