大家の青色申告入門|1戸からの申請期限と控除の違い

賃貸経営を始めると、「1戸だけでも青色申告にできる?」「5棟10室がないと申請できない?」と迷いやすい。結論から言うと、不動産所得が生じる業務を行う人は、規模が小さくても青色申告の承認を申請できる。

ただし、青色申告特別控除の金額や青色事業専従者給与など、一部の取扱いは不動産貸付けが事業的規模かどうかで変わる。申請期限を逃さず、控除額だけでなく記帳と保存の準備を進めよう。

青色申告とは

日々の取引を帳簿へ記録し、その帳簿に基づいて正しく所得を申告する制度だ。税務署へ「所得税の青色申告承認申請書」を期限内に提出し、承認を受けて利用する。

青色申告は自動的に始まらない。物件を買った、開業届を出した、会計ソフトを使っただけでは青色申告にならないため、承認申請を別に確認する。

戸建て1戸でも青色申告を申請できる

「5棟10室」は青色申告そのものの申請条件ではない。不動産所得が生じる貸付けを行う人は、戸建て1戸など小規模でも青色申告を申請できる。

一方、55万円・65万円の青色申告特別控除や青色事業専従者給与などでは、不動産貸付けが事業として行われているかが関係する。青色申告ができるかと、特典をどこまで使えるかを分けて考えよう。

申請期限

国税庁の案内では、原則として青色申告をしようとする年の3月15日までに提出する。その年の1月16日以後に新たに不動産の貸付けを始めた場合は、開始日から2か月以内だ。

  • 1月15日以前に貸付けを開始:原則3月15日まで
  • 1月16日以後に貸付けを開始:開始日から2か月以内

期限を過ぎると、その年分から青色申告にできない可能性がある。物件の決済日だけで判断せず、賃貸の用に供した日や貸付開始の状況を確認し、余裕を持って提出しよう。

開業届と青色申告承認申請書は別

新たに事業的規模の不動産貸付けを始める場合などは、個人事業の開業・廃業等届出書も関係する。ただし、開業届と青色申告承認申請書は別の書類だ。

「開業届を出したから青色申告も完了」と思い込まず、提出した書類の控えやe-Taxの受信通知を保存する。

青色申告特別控除は3段階

10万円控除

青色申告の承認を受け、簡易な帳簿など一定の要件を満たす場合に検討できる。事業的規模に満たない不動産貸付けでは、基本的にこの区分が中心になる。

55万円控除

不動産所得を生ずべき事業を営み、正規の簿記の原則(一般に複式簿記)で記帳し、貸借対照表・損益計算書を添付して期限内申告するなどの要件がある。

65万円控除

55万円控除の要件に加えて、e-Taxによる申告または一定の電子帳簿保存を行うなどの要件を満たす場合に検討できる。

青色申告にしただけで自動的に65万円控除になるわけではない。不動産貸付けの規模、帳簿、申告方法をすべて確認しよう。

「5棟10室」の考え方

不動産貸付けが事業として行われているかは、原則として社会通念上、事業といえる規模かを実質的に判断する。国税庁は、建物貸付けについて次の形式的な目安を示している。

  • 貸間・アパート等:独立した室数がおおむね10室以上
  • 独立家屋:おおむね5棟以上

形式基準だけであらゆるケースが決まるとは限らない。戸建てと部屋貸しが混在する場合、共有、空室、特殊な貸付けなどは個別確認が必要だ。

青色申告で準備する帳簿

  • 仕訳帳
  • 総勘定元帳
  • 現金出納帳・預金出納帳
  • 家賃の収入帳
  • 経費帳
  • 固定資産台帳
  • 借入金の元金・利息管理

55万円・65万円控除を目指すなら、年末に貸借対照表を作れるよう、開始時点の預金、借入金、建物、設備、敷金などを正しく登録する必要がある。

青色申告の主なメリット

青色申告特別控除

要件に応じて10万円、55万円または65万円の控除を検討できる。

純損失の繰越しなど

一定の要件を満たす純損失について、翌年以後への繰越しなどが認められる場合がある。ただし、不動産所得の赤字には土地取得の借入利息など損益通算で制限される部分もあるため、赤字の全額が自由に使えるとは限らない。

青色事業専従者給与

事業的規模の不動産貸付けで、生計を一にする親族が一定の要件を満たして専ら従事し、届出を期限内に提出している場合、相当な給与を必要経費に算入できる制度がある。

名義だけの給与や、実際の仕事・勤務時間に合わない金額は避ける。業務内容、勤務記録、振込、給与台帳を残す。

青色申告を始める手順

  1. 貸付開始日と申請期限を確認する
  2. 青色申告承認申請書を作成・提出する
  3. 提出控えまたはe-Tax受信通知を保存する
  4. 事業用口座・カードを決める
  5. 会計ソフトや帳簿を準備する
  6. 土地・建物・設備・借入金の開始残高を登録する
  7. 毎月の家賃、経費、元金、利息を記帳する
  8. 控除要件に合う決算書と申告方法を確認する

よくある間違い

  • 開業届だけで青色申告になったと思う
  • 5棟10室未満は青色申告できないと思う
  • 1戸でも自動的に65万円控除を受けられると思う
  • 申請書を確定申告の時に出せばよいと思う
  • ローン返済額を全額必要経費にする
  • 建物・設備の固定資産台帳を作っていない
  • 家族への給与を届出や勤務実態なしで経費にする

白色申告でも記帳は必要

青色申告を選ばなければ帳簿が不要になるわけではない。国税庁は、不動産所得などがある白色申告者にも記帳と帳簿書類の保存を求めている。

どちらでも記帳するなら、早い段階で青色申告の要件を確認し、自分の規模と管理方法に合う制度を選ぶのがよい。

まとめ

戸建て1戸でも青色申告の申請はできるが、控除額や専従者給与などは事業的規模と要件によって変わる。5棟10室は申請の可否ではなく、事業的規模を判断する目安の一つだ。

最優先は提出期限を逃さないこと。そのうえで、10万円・55万円・65万円の要件を確認し、物件購入初日から帳簿と証拠書類を整えよう。

参考

※この記事は個人の一般的な不動産所得を前提にまとめたものだ。貸付開始日、規模、所得、相続、共有などで扱いは変わる。申請・申告前に税務署または税理士へ確認してほしい。

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